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大学概要

令和6年度入学式 告辞(2024年4月5日)

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
 また、これまで新入生を支えてこられたご家族ならびに関係者の皆さまにも、壇上のご来賓ご列席の皆さまとともに、お慶び申し上げます。

 流氷を望むオホーツク地域も長く厳しい冬が終わりを告げ、新しい生命が息吹く春に、皆さんをお迎えできることを、教職員一同、大変うれしく思います。本学は、この度、学部443人、編入21人、大学院博士前期課程161人、大学院博士後期課程14人の合わせて639人の方々をお迎えしました。
 新入生を含む在学生は、46都道府県、22ヶ国から集まり、ともに学んでいます。是非、新しい仲間をつくり、地域交流、国際交流も楽しみにしてください。

 さて、世界はロシア?ウクライナ戦争、イスラエル?ガザ戦争、そして環境?食料?エネルギーなど、人類の存亡に関わる深刻な問題を抱えています。このような切迫した時代に、大学で腰を据えて学ぶことに、どのような意味があるのでしょうか?
 本学は、入学した皆さんに何を提供し、皆さんに何を期待するのでしょうか?これらについて、私の考えをお話しして、お祝いの言葉といたします。

 まず、大学で学ぶ意味は何でしょうか?皆さんそれぞれに答えをお持ちだと思いますが、通底する意義は「知性を高めること」であると思います。知性とは、プラトンが「知は最も美しいものの一つである」と言ったように、心豊かに美しく生きるための素養であり、ピアジェが「知性とは方法が判らないときに使うものだ」と言ったように、答えのない問いに立ち向かうための力の源です。
 そして、これまで人類が築き上げた知識体系である【学問】を通じて仲間と共に知性を育み、大人として、良き市民として成熟する場が大学です。

 ところで、学問にはさまざまな分野があります。人間や、その集団である社会の本質を追求する人文?社会科学、自然界の様々な謎や原理を解明する理学、そして、この世の中に存在しない新しい世界を創造する工学などです。本学は、自然と調和する工学を通じて社会に貢献すること、を使命としています。これは単に豊かな自然に囲まれた環境で学ぶ、ということではありません。自然の摂理に従い、持続的に発展する世界を創造することをめざすからです。

 また本学は、令和4年4月に人文?社会科学を応用した商学を担う小樽商科大学、理学を応用した獣医学?農畜産学を担う帯広畜産大学と経営統合し、同時に、商?農?工の実学三分野を包摂する北海道国立大学機構が設立されました。今後は二大学とも協力し、自然や人間社会に関する知見を導入した工学の教育研究に力を注ぎたいと思います。

 このような特徴を持つ本学での学びが、実り多いものとなるために、我々教職員からの期待として、皆さんには次の三つのことを、心に留めていただきたいと思います。

 一つ目は、工学の専門的な知識と考え方をしっかりと身につけてほしいということです。それは、どのような分野であるにしろ、一つの専門的事柄を深め、突き詰めていくことが知性を高めるために極めて有効だからです。その上で、様々な社会問題解決の鍵の一つが技術革新であり、技術革新は、過去の延長ではないとしても、人類がこれまで培ってきた工学知識体系の中に、新しい発見の手がかりが隠されているからです。

 ただし、専門知識を身につけることは知性を高めるための十分条件ではありません。そこで二つ目は、専門知識を活用して新しい世界を創造しようとするときに、それが本当に社会全体あるいは自然環境にとって望ましく、正しいことなのかを考え、行動する力を養ってほしいということです。そのためには幅広い視野、柔軟な態度、健全な判断、すなわち【良識】が必要です。
 本学および機構では、良識を育むリベラルアーツに関する学びも提供します。ただし、良識は大学で授業を受けただけで身につくわけではありません。友人や社会との自覚的、自律的な係わりや、未知の世界を体験すると同時に自分自身と向き合う読書の習慣を身につけ、愉しんでください。

 そして三つ目は、生涯にわたり学び続けてほしいということです。学部入学生の皆さんには、卒業後、理系ではスタンダードとなっている大学院に是非進学してほしいと思いますが、大学や大学院は学びの終着点ではありません。むしろ“学ぶことについて本格的に学ぶ”スタートラインです。
 “Life is about creating yourself.”という箴言は、アイルランドの劇作家バーナードショーの言葉とされています。前文も含めると「人生は自分探しの旅ではなく、自己形成の旅である」ということです。成長し続ける自己形成の旅に、終わりはありません。大学はやろうと思えば何でもできるところです。そして本学は自分を創造しようとする人を全力で応援します。皆さんには大学生活を全力で楽しんでほしいと思います。

 結びとなりますが、新入生の皆さんの学生生活が豊かで、実り多きものとなることを祈念しています。
 改めて、ご入学、誠におめでとうございます。

 

令和6年4月5日        
北見工業大学長 榮坂 俊雄